輝く女性たち

守永惠さん / 特定非営利活動法人ちいきのなかま 理事長

障がい者のきょうだいとして

 家族の問題に関心をもったのは、私が障がい者のきょうだいとして成長してきたことが影響しています。

 私の弟は自閉症で知的障がい者です。彼の子ども時代には医療、福祉、制度の対応が不十分で私たち家族は混乱し、弟に対してきちんとした対応ができませんでした。弟は理解されず、また理不尽な対応で苦しんだと思います。

 しかし両親もまた苦しさを抱えていました。その中で多感な子ども時代を生きた経験が、私の土台です。

 私は親の期待に応え「いいお姉ちゃん」であり、SOSが出せない子どもでした。本当は障がいが理解できず、知的障がいのきょうだいを恥ずかしく思い、「弟はいない」ことにしたり、いなければいいのに…と思ったことは何度もあります。そんな差別的な自分が嫌いでした。

 一方でいつも弟を取り巻く環境を醒めた目で批判的に見ていて「家族の視点」から障がい者問題を考え始めたのが10代の頃でした。

 福祉系の大学に進学し、たくさんのフィールドに足を運び、様々な人たちと出会いました。私の問題意識は障がい者問題を入口に、成長とともに、そして仕事を通じて広がり深まりました。 

 

障がいを持つ子のきょうだい支援

 

ママフェスタ

ファミリーサポートセンター事業の運営

 結婚後、佐世保に暮らし始めて10年ほど、地域で子どもや女性のための市民活動に取り組みました。

 転機が訪れたのは平成7年の頃です。当時、療育センターを設立する動きに関わり、同時に佐世保市女性企画懇話会で「ファミリーサポートセンター事業」を提案する機会をいただきました。まだ子育て支援など地域には皆無の状態でした。「子育てがつらい」という当事者の実感を公的なシステム作りに反映できることはとてもやりがいのあることでした。

 障がい者のきょうだいとして佐世保市子ども発達センター設立に貢献したことは、私の中では弟に対して貢献できたような気持ちでうれしいことでした。

 ファミリーサポートセンター事業は、提案後に実現の運びとなり、縁あって提案者の私が事業に取り組むことになりました。

 スタートから8年、自身でNPO法人を設立し、佐世保市からファミリーサポートセンター事業を受託したので、通算20年近くこの仕事に携わってきました。

 平成23年、ファミサポ事業の職員にママスタッフを採用しました。平成24年度彼女たちの企画でママの起業を応援する「ママフェスタ」を開催し成功を収めました。企画の面白さとネットワークの広がりに当事者目線の可能性を感じました。 

 ファミサポの支援の中で産前産後ケアの必要性を感じ学習会を開始したのは平成25年。地道なアプローチを重ねて平成28年度「産前産後ケアからの切れ目ない支援の構築」をテーマに市内の子育て支援者のネットワークで「ようこそ赤ちゃんフェスタ」を開催。市民の底力を見える化したことが大きな成果。そして産前産後ケアの必要性をアピールしました。孤立化する産後のママたちの苦境を行政に訴え、時代の風の後押しを受けて、翌29年度には佐世保市で産後ケア事業が始まりました。  

 

当事者だからわかること

 当事者の言葉や感覚は大切だと思いますし、尊重しないといけないと思います。まず、話を聞くことから支援は始まります。私たちは子育て中の方、支援者両方のお話を聞くことができます。

 子育ての何がつらいのか、また支援の何が難しくストレスを感じるのか。よくよく聴くと、思いがけない発見があり、当事者への理解が広く深くなっていきます。

 大事なのは、当事者の誰かが抱えている課題を言葉にして社会に伝え、みんなで共有して解決につなげていくことです。

 常に未来のことは念頭にありますが、どちらかというと現場にいて、人との関係を深く掘り下げていくことで、私の仕事は成り立っているなと思います。

(更新 平成30年3月)

 

 

ようこそ!赤ちゃん&子どもフェスタ

ライフ年表

26歳 第一子出産後、義父・義母の看病と介護、子育て。義母との別れ、葬儀。
27歳 子育てしながらボランティア活動開始
35歳 就労(佐世保市子ども発達センター 広場担当に自己推薦)
48歳 NPO法人設立
58歳 ちいきのなかま通信 NO.60 発行できました(5年間毎月発行)

  • 現在の仕事(活動)を始めるきっかけ又はやりがい
  • 街の片隅で、たくさんの家族のドラマを体感し、その実感を事業に反映して仕事ができる今の生き方は自分らしいなと思っています。
    人は誰でも可能性があります。
    子どもが、心からワクワクする経験を通して成長するように、新たなチャレンジを通して可能性を広げていく人たちとワクワクし続けたいと思います。
    いっしょに働いている仲間の笑顔や達成感も私の仕事の原動力です。

  • 仕事(活動)と家庭の両立で工夫していること
  • 今は夫婦二人暮らしで時間にゆとりがあり、特別な工夫は必要なくなりました。ルーティンをこなせば片付くようにあまりモノは増やさない事、シンプルな家事ですむように努めています。
    料理、特に常備菜は週末にまとめて作ります。
    以前は忙しい中の工夫、今は健康に過ごすための工夫が大事になりました。

  • プライベート(休日)の過ごし方
  • 遠くに暮らす息子たちと会って話す家族の時間が何より幸せな時間ですが、年に10日もありません。
    普段は本を読んだり、家事をしたり。散歩も好きです。
    忙しくない時期は、手縫いで小さい作品を作るのも好きです。
    離れて暮らしていますが、結婚前の私の家族(障がいのある弟も含めて)も大事にしたいと思っています。
    年数回、実家に戻り、弟と過ごしています。
    これからも元気が続く限り、その時間を大事にしたいと思っています。

  • 座右の銘(好きな言葉)
  • 「苦労はしないほうがいい」

    夫の母の言葉。
    「苦労した人の中で立派になる人はごく僅か、大抵の人は苦労して荒んでしまうもの。惠さんは今のまま、苦労を知らずに生きてほしい」
    大好きな母でした。
    52歳の若さで亡くなるまで母の人生は本当に苦労の連続でした。
    長男の妻として至らない私でしたが、私らしさを大事にしてくれました。
    歳を重ねて、人並みに苦労してみて、改めてこの言葉に母の思いの深さ感じています。

  • これからしたいこと(今後の目標)
  • 今、私たちは産前産後からの生活を支援するメニュー(家事援助など)を作ろうとしています。
    時代が急速に変化したために、次世代に伝わっていない子育て文化、家事文化、食文化の継承、支援する人材育成が課題だと思っていますし、産前産後ケアの多機能な拠点として「みんなの実家プロジェクト」を稼働します。
    個人的には毎朝、習慣になっている出勤前のストレッチの継続。8年前から始めたヨガも継続したいと思います。

  • 後輩女性へのメッセージ
  • 女性たちは本当に能力があるなと実感しています。
    もっとチャンスがある社会にしたいものです。
    家事、調理ができない人が多いのは残念です。
    比較するようなことではなく、また役割が男か女かではなく、仕事も家庭も大事です。
    その両方を大事にすると決めることには覚悟が必要で、腹が座れば、また人に甘えることができれば、大抵のことはクリアできると思います。
    家庭を大事にする文化を育もうと思いますし、一緒に育んでいただければと思います。