輝く女性たち

中田慶子さん / NPO法人DV防止ながさき 理事長

 

中田慶子さん

 ドメスティックバイオレンスの被害を受けた方の相談、支援、予防啓発などの活動をしています。

 2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(DV防止法)が成立して、これまで、男女不平等な社会の中で当たり前のように存在していた夫から妻への暴力が、ようやく、許されない人権侵害として見直されるようになったことは、画期的なできごとでした。

 それでも2001年当時は、DVという言葉すら一般的ではなく、暴力を受ける側にも原因があるのではといった「DV神話」による偏見から、被害者に冷たい目が向けられることも多くありましたし、支援体制も十分ではないと思いました。

 公的な枠組みが作られたことだけでは不十分、市民サイドからもDVについて発信していく必要性を感じて、2002年秋、有志が集まって発足したのがDV防止ながさきです。翌年にNPO法人化。

最初は週1回の電話相談だけの細々としたスタートでしたが、しだいに相談日も増え、面接相談、被害者の直接的な支援へと広がってゆきました。(電話相談 095-832-8484)

 相談を受ける中で気づいたのは、結婚後に暴力が始まるのではなく、交際している頃からすでに暴力が始まっているケースが多いということでした。

 そのために、若い人たちにDVの知識を持ってほしい、暴力にあっても我慢をしないでほしい、相談機関の情報も伝えたいと、2004年から、高校生、大学生といった若い世代を対象にデートDV予防教育を開始しました。

 現在は、中学校から高校生、大学生等へメンバーが手分けして年間100回近く、1万7千人位へ出前授業を行っています。

 最初は、高校生に男女交際の話なんてとんでもないとか、早すぎるとか言われたりもしましたが、今では「長崎県内の高校生は、一度はこのデートDV予防教育を受けて卒業するようにしたい」との平成25年3月の県教育長の議会答弁もあって、全国からも予防教育の先進県として注目されています。 

 また、行政と協働しての支援活動も「長崎モデル」として実施しており、DV被害を受けてやむなく住み慣れた地域を離れてきた方々が、新しい土地で、少しでも住みやすくなじんでいけるように、支援をしています。

 母親と一緒に家を出てきて、学校の友人などとも離れてきた子どもたちへの支援もとても大事で、子どもたちが安定してくるとお母さんも落ち着いて生活ができるし、お母さんが落ち着くと子どもたちも安定する、相乗効果が生まれてきます。幼いころから家庭の中で暴力を見聞きしてきた子どもたちは、とても苦しい思いをしてきているので、もっともっといろんな場での理解と支援が必要だと痛感しています。

 団体発足後、15年があっというまに過ぎてしまいました。設立当初には考えていなかった領域・規模に活動が広がり、やらねばならないことが次々に出てきて、ニーズに追われるように走ってきましたが、設立当初から多様なメンバーに恵まれ、チームワークの良さで、困難を困難と感じないで乗り越えてくることができました。  

 不思議なことに、「困ったなあ、どうしよう」と思っていると、必ず必要な人材に恵まれ、資金にも恵まれてきたことで、なんとラッキーだったことかと思います。とはいっても、常に知恵も力も人手もお金も足りず、悩みが尽きない日々なのですが、いろんな人に出会い、助けられるというのは、とても素晴らしい経験で、この活動をしていてよかったと思う瞬間がたくさんあります。

(更新 平成30年2月) 

 

 

 

 

 

シェルター入口のくつのオブジェの前で(デンマーク)

 

ライフ年表

20代 大学で心理学を学び都庁に入職。知的障がいのある成人の施設に勤務。
30代 子育て中、今で言うママ友仲間と地域活動、生協活動。地域の先輩女性たちに学ぶこと多し。
30代後半 家族でノルウェーに滞在。男女平等社会、生活に根付いた人権思想にショックを受ける。
40代 市議会議員として2期過ごし環境、福祉、女性をテーマについて活動。
50代 長崎に戻る機会を得て、現在の活動をスタート。

  • 現在の仕事(活動)を始めるきっかけ又はやりがい
  • DV予防教育で高校や中学に行くと、生徒達が真剣に耳を傾けてくれます。
    そして授業後の感想文の「暴力は絶対しない」「今日の話を絶対忘れない」「男女平等の社会をつくりたい」「 NOといえるようになりたい」などの沢山の言葉に毎回励まされ、パワーをもらっています。
    中には「話を聞いて自分が DV被害を受けていることに気づいた」という生徒も。
    活動を通じていい仲間に出会え、やりたいことをやれている、なんと幸せなことでしょう。

  • 仕事(活動)と家庭の両立で工夫していること
  • 仕事が忙しかった40代は、早朝から夜までほとんど家にいない毎日。
    子どもはかなりガマンしていたのだろうと思います。
    ずいぶん周囲の方に助けていただきました。
    両立とか意識する間もなく、今のように便利な惣菜店とか弁当屋がなかったので、できる時は食事だけは作るようにしていたのが、せめてもの努力だったでしょうか。
    もともと食いしん坊というだけかも。

  • プライベート(休日)の過ごし方
  • 気分転換は料理と読書。
    本は一人の作家にはまるとかたっぱしから読む傾向あり。
    それで結局、掃除や片づけは永遠に後回しに・・・。

  • 座右の銘(好きな言葉)
  • 「恩送り(Pay it Forward)」

    夫が不在がちの核家族の子育て中からこれまで、病気の時、困ったときに、たくさんの方にお世話になりました。
    その時にいつも言われたのは「気にしないでいいから。将来、あなたができるようになった時に、助けが必要な他の人に返してあげてね」という言葉で、とても気持ちが軽くなりました。
    恩返しはできなくても恩送りはしたい・・・。

  • これからしたいこと(今後の目標)
  • 身近な人からの暴力は、心身を深く傷つけます。
    それを目撃する子どもたちへの影響も深刻。
    イヤな事はNOといえる人、身の回りの差別や暴力に敏感になる人が増えることで、暴力のない社会に一歩でも近づけたらいいな。

  • 後輩女性へのメッセージ
  • 若い時を振り返ってみて、その時は一見無駄に思えることも、あとですべて役に立つことが多いなあと実感しています。
    ですから思うようにならない時期も、決して無駄な時間ではありません。
    その時々に出会った人、出会った出来事が、あとにつながっていきます。